『ギルガメシュ叙事詩』(ギルガメシュじょじし)は、古代メソポタミアの文学作品。
実在していた可能性のある古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュをめぐる物語。
主人公のギルガメシュは、紀元前2600年ごろ、シュメールの都市国家ウルクに実在したとされる王であるが、後に伝説化して物語の主人公にされたと考えられる。
最古の写本は、紀元前二千年紀初頭に作成されたシュメール語版ギルガメシュ諸伝承の写本。シュメール語版の編纂は紀元前三千年紀に遡る可能性が極めて高い。
研究 [編集]
19世紀にアッシリア遺跡から発見された遺物の一つで、ジョージ・スミスが解読を進め、1872年に『聖書』と対比される大洪水の部分を見つけ有名になった。始めのうちは神話と見なされていたが、その文学性に注目が集まり次第に叙事詩とされるようになり、19世紀末には研究がさらに進み、「ギルガメシュ」と読めることを発見しアッシリアのギルガメシュであることを発表した。これ以後1900年の独訳を嚆矢に、各国語への翻訳が進み、各地の神話、民話との比較がされている。和訳は矢島文夫により完成し、1965年に山本書店から刊行された。
ウルクの王ギルガメシュは、ウルク王ルガルバンダと女神リマト・ニンスンの間に生まれ、3分の2が神で3分の1が人間だった。ギルガメシュは暴君であったため、神はその競争相手として粘土から野人のエンキドを造った(写本そのものが粘土板から作られていることにも注意)。
ギルガメシュがエンキドに売春婦(シャムハト w:Shamhat、女神イシュタルに仕える女神官兼神殿娼婦という版もあり、彼女の役割に付随するニュアンスが少々異なる)を遣わせると、エンキドはこの女と6夜7日を一緒に過ごし、力が弱くなったかわりに思慮を身につける。その後、ギルガメシュとエンキドは力比べをするが決着がつかず、やがて二人は友人となり、さまざまな冒険を繰り広げることとなる。
二人はメソポタミアにはない杉を求めて旅に出る。杉はフンババ(フワワ)という怪物により守られていたが、二人は神に背いてこれを殺し杉をウルクに持ち帰った。このギルガメシュの姿を見た美の女神イシュタルは求婚したが、ギルガメシュはそれを断った。怒った女神は「天の雄牛」をウルクに送り、この牛は大暴れし、人を殺した。ギルガメシュとエンキドは協力して天の雄牛を倒すが、怪物を殺したこととイシュタルへの侮辱に神は怒り、エンキドは神に作られた存在ゆえに神の意向に逆らえず死んでしまった。
ギルガメシュは大いに悲しむが、自分と同等の力を持つエンキドすら死んだことから自分もまた死すべき存在であることを悟り、死の恐怖に怯えるようになる。そこでギルガメシュは永遠の命を求める旅に出て、さまざまな冒険を繰り広げる。多くの冒険の最後に、神が起こした大洪水から箱舟を作って逃げることで永遠の命を手に入れたウトナピシュティムに会う。大洪水に関する長い説話ののちに、ウトナピシュティムから不死の薬草のありかを聞きだし、手に入れるが、蛇に食べられてしまう(これにより蛇は脱皮を繰り返すことによる永遠の命を得た)。ギルガメシュは失意のままウルクに戻った。
友情の大切さや、野人であったエンキドが教育により人間として成長する様、自然と人間の対立など、寓話としての色合いも強い。
影響 [編集]
考古学者や文献学者の中には『旧約聖書』にこの物語の影響があると考える者もおり、特にノアの方舟のくだりは、ウトナピシュティムの洪水の神話が元になっているとしている。
このほかの旧約聖書の内容や、ギリシャ神話にも、この物語が原型と考えられているものがある。古代以後、忘れられていたが、最初の粘土板写本が発見された1872年以後の文学作品にも大きな影響を与えた。
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